MODファイルには、標準MIDIファイルに欠けている音色データが含まれています。その分ファイルサイズが大きくなってしまいますが、それ以上の利点もあるのです。まず思い付くのは「シンセサイザーを持っていなくても曲がならせる」ということと「どんなコンピュータでも同じ音がなる」ということ。厳密に言うと、両方ともやや間違っていますが、MODの悪い点については次の項目を見てください。
最近のMacであれば音を鳴らす機能は必ずついています。音を鳴らすだけではなく、音色を変えたり、音程を変えたりすることもできます。案外、この機能に気付いていない人もいるようです。例えば、MacOSの警告音。MacOSには最初から5〜6種類の音色が入っていて、好きなものを選ぶことができるようになっています。あれもMacOSがユーザーに対して警告を発しなければならなくなったときに、Macのサウンド・ハードウェアを利用して音声を合成しているわけです。
音量が変えられるのも、それと同じように考えればいいでしょう。Macにはハードウェア・ボリュームとソフトウェア・ボリュームがあり、それぞれをべつべつに設定することができます。「モニタ&サウンド」コントロールパネルで全体のボリュームを調節しているのはハードウェア・ボリュームを、警告音のボリュームを調節しているのはソフトウェア・ボリュームを、それぞれ変更しているのです。ハードウェア・ボリュームはコンピュータが発する音全部を一括して制御します。ソフトウェア・ボリュームはアプリケーションや音ごとに設定することができます。
また、音を再生するスピードを変えると、音の高さが変わるようなしくみになっているので、それをつかって音程を変えることができます。カセットテープを再生したまま早送りをすると、声や音楽の音程が高くなって聞こえるのと同じしくみです。
音色・音量・音程の三つは音の三大要素であり、この三つがコントロールできれば、自由に音を操ることができます。しかも、Macではこれらはすべてソフトウェアから制御することができます。つまり、適切なソフトウェアを使えば、ソフトウェアだけで音を合成し、Mac内臓のサウンド・ハードウェアだけで音を鳴らすことができるのです。
インターネットで使われているHTMLを考えてください。HTMLにはGIFやJPEGなどの画像が埋めこまれており(正確には違いますが)、HTMLがそれらの画像の配置や表示のしかたを決めています。そのため、Netscape Communicatorを使っても、Microsoft Internet Explorerを使っても、同じ画像が同じ配置のされかたで見ることができるのです。
それと同じく、MODファイルの中には演奏データと音声データが含まれているので、標準MIDIファイルを使ったときのような、シンセサイザーの違いによる演奏の違いがなくなります。どのコンピュータへ持っていっても、再生にはMODファイル中の音声データが使われ、演奏データに従って演奏されます。しかも、ソフトウェアによっては音をよりクリアにしてくれたりもします。
MODを使えば曲の編集も楽になります。MODは曲のひとつのまとまりを「パターン」という形で保存します。1パターンを4小節か2小節として使うことが多いようです。パターンをいくつか用意して、それを並べかえてひとつの曲を作ります。曲中には同じパターンを何回使用してもかまいません。メロディの一部を変更するには、パターンを書き換えます。そうすると、曲の中でそのパターンが使われている部分すべてが変更されるのです。
標準MIDIファイルの「イントロからエンディングまで一方通行」な雰囲気にくらべ、MODは楽譜のように途中で戻ったり、何小節か飛ばしたり、ということが簡単にできるようになっています。テクノやミニマル・ミュージックなどのくり返しの多い曲を作るのに威力を発揮するでしょう。
MODファイルには音色サンプルが入っていることは説明した通りです。その音色サンプルはインターネットからダウンロードしてきたものでも、自分でCDやマイクから録音したものでもかまいません。曲の中にある音色よりも気に入った音が手に入ったら、簡単に曲中のサンプルを入れ替えることができます。もちろんコンピュータ1台だけでやっていますので、シンセサイザーをつなぎかえたり、といった必要はありませんし、友達に音をもらうことだってできます。
(c) 1998, 1999 時間蠅
作成:1998.6.24〜1999.1.15